「え、難民は妊娠しちゃいけないってことですか?」——困窮状態に陥った難民一家(『インパクション』)

 引き続き、困窮する難民一家への経済的支援をお願いいたします。志ある方々からのカンパにより、呼びかけ開始当初は一月につき約10万円が寄せられておりました。しかし最近になってそれも減少傾向にあります。栄養のある食事はおろか、電気・ガス・水道もこのままでは停止されるとのことです。私たちは光熱費について各供給会社に事情を説明したうえで支払いの延期を求めてきましたが、それにも限度があるとのことで、供給停止通告が来ています。
 以下は、『インパクション』誌に掲載されたカンパ呼びかけです。編集者のご厚意により転載の許可をいただきました。記事末尾の口座までご送金くださるよう、心よりお願い申し上げます。

「え、難民は妊娠しちゃいけないってことですか?」——困窮状態に陥った難民一家
常野雄次郎(つねの・ゆうじろう)
「ある難民一家を支える会」


 本誌2月号でも報じられたように、1月7日に東京入管で無抵抗の難民が公務執行妨害容疑で不当逮捕された。彼は約20日間勾留されたのち、不起訴処分を受けた。しかし、6名からなる難民一家の苦境は続いている。
 2009年8月に来日した一家は、翌月には難民申請を行った。10月には、外務省人権人道課の認定を受け、難民事業本部(RHQ)による経済的支援が開始された。RHQは、難民申請者に経済援助を行う外務省系財団法人である。
 ところが、今年3月になって、その支援が完全に打ち切られたのだ。RHQはさらに、これまでに受給した援助金を全額返却せよとまで通知してきた。一家は、来日以来あてにしてきた生活基盤を突然失うことになった。
 なぜだろうか? 一家に対しては、母親の妊娠検診の領収書を提出したからだ、という説明がなされた。一家はこれまで、医療費の支援を受けるため、病院の領収書を提出してきた。具合が悪くなってクリニックにかかり、妊娠が判明した際も、これまで通りのことをしたまでだ。外務省人権人道課(!)の管轄下にあるRHQは、妊娠は援助の対象とはならないのに妊娠検診を費目に含む領収書を提出したことは不正にあたるので、一切の援助を打ち切ることを決めたと説明する。この外務省・RHQ側の言い分は、一家の委任を受けた鈴木雅子弁護士による照会によっても確認された。
 結果として、一家は困窮状態に陥っている。光熱費や家賃の支払いは数ヶ月にわたって滞り、食べ物を買う現金もほとんどない。極めて重篤な医療問題を抱えている一家6人は、水と米などだけで数日間を過ごすこともある。
 彼らは、しきりと自殺をほのめかしている。私たちは「死なないでほしい」と伝えているが、一家の絶望の方にむしろ客観的根拠があるのかもしれない。
 難民申請中で、正規の滞在資格のない一家は、RHQの他に頼る先がない。生活保護国民健康保険などの可能性について相談するため、私たちは地元自治体を訪れた。
事情を説明すると、担当係長は「え、難民は妊娠しちゃいけないってことですか?」と当惑した表情を見せた。その上で、一家への保護はしないとのことだった。
 妊娠は生活費の打ち切りによって罰せられるべき犯罪なのだろうか? 難民申請者は妊娠したら死ねということなのか? これは、国家による生殖の管理であり、性的権利の侵害だ。繰り返そう。「え、難民は妊娠しちゃいけないってことですか?」。そして今や、一家の生存が脅かされている。
 一家が生活を維持し、権利回復のためたたかっていくためのカンパを呼びかける。

ゆうちょ銀行
口座番号:10270-67335881
口座名義:ナシル モハメド クァドリ

※他銀行からの振り込みの場合
店名:ゼロニイハチ(028)
預金種目:普通預金
口座番号:6733588

連絡先

「ある難民一家を支える会」
http://d.hatena.ne.jp/refs/
0107refugee@gmail.com

 ブログ担当者(常野)は、ジャパンタイムズでも報じられた1月の不当逮捕事件翌日より、ご一家と交流してきました。そのなかで、断言できることがあります。この6人は人間です。その人権はおろか、命がいま危機に瀕しております。